Embedded Value(EV)対DCFその1
夏です。暑いです。夏休み早く取りたいです!
みなさんこんにちは、そる丸です。
夏ど真ん中ですが、皆さんいかがいかがお過ごしでしょうか。
さて本日のテーマですが、最近はアクチュアリー試験の話ばかりでしたので、趣向を変えて、少しテクニカルな話を書きたいと思います。
テーマは「Embedded Value(以下、EV)を理解しよう」です!
EVは保険会社(主に生命保険会社)の企業価値を表す指標です。ですが、一般の人にはかなりわかりづらい指標でもあります・・・
なので、そる丸がおせっかいを発揮して、何回かにわたって解説することにしました。
ただすみません。スペースの関係上、基礎的なファイナンスの知識がある読者の方を想定して書かせてもらいます。「現在価値とは何か」まで説明すると大変なので・・・
アクチュアリー試験の生保2を受ける人にも参考になると思うのでぜひ見てくださいね。
シリーズ「EVを理解しよう」、一発目となる本日はEVとDCF法の違いをテーマにしたいと思います!
保険会社の企業価値算出にDCF法は使えないのか
ファイナンスを勉強したことがある方はご存知だと思いますが、一般的に企業価値を算出するときはDiscount Cash Flow法(以下、DCF)という方法を使いますよね。
皆さん、なんで保険会社の企業価値の算出にDCF法が使われないのか。疑問に思ったことありませんか?
僕がEVを勉強はじめのときは真っ先にこの疑問を抱きました。DCF法でいいじゃないかと。
DCF法のシンプルさを知ってしまっている人ほど、EVのわかりづらさにいらいらしてしまうと思うんですよね。
なので、まずはこの不満を解消するべくがんばりたいと思います!
ちなみに本日のブログはわかりやすさを重視してかなり簡略化した説明をします。
詳細な説明は次回以降でカバーする予定ですので、つっこんだところを聞きたい人は少し我慢してください。
またEVは法定で定められた計算方法がないので、特に断りを入れない限り、一番先進的な市場整合的EV(以下、MCEV)の計算手法を念頭に話を進めたいと思います。
DCF法の考え方
まずDCFの考え方をおさらいしましょう。この手法は事業が生み出すfree cash flow(以下、FCF)の現在価値を事業価値とみなす方法です。
そして、会社全体の株主価値を出すときは、算出した事業価値に、事業に使用していない保有現金や遊休資産を足して、有利子負債の額を引きます。
FCFの算出方法には若干のバラエティがあるのですが、代表的なものだと以下の式です。
・FCF=税引後営業利益+減価償却費-設備投資額-運転資金の増加額
このFCFの持つ意味ですが、要は企業が自由に使い道を決められるお金ということです。追加投資してもよいし、預金にしてもいいし、株主に還元してもいい。
この株主に還元してもいいというのが一つのポイントです。
詳細は次回解説しますが、つまるところFCFは配当可能利益を疑似的に表現しているんだと理解してください。
まとめると以下のとおりですね。
なんか式が四つもあって、ややこしいですね。ここで文系アクチュアリーらしく大胆に簡略化してしまおうと思います。
ずばりDCF法での株主価値はこれです!
株主価値=事業が将来生み出す配当可能なお金+現在持っている純資産(資産―負債)
かなり乱暴なまとめ方をしましたが、ファイナンスとか知らんよ。という方はこれで理解してください。
要は「株主価値=いま持っているお金+将来入ってくるお金」です。
「いま持っているお金」は借金を全部返済したあとのお金で計算します。
EVの考え方
それでは引き続きEVの考え方に移ります。先に結論を言ってしまいますが、実はEVの計算コンセプトはDCF法と同じです
ただし以下の二つに違いがあります。
- DCF法は現在運営している事業以外にも、将来にスタートする事業が生み出すCFも株主価値の計算に入れていいです。一方で、EVでは現在保有している保険契約(以下、保有契約)から発生する利益のみを使って企業価値を算出します。将来に獲得する保険契約から得られる利益は加味してはいけません。
- DCF法の測定単位はCFですが、EVでは会計利益を使います。
EVは下記の式で定義されます。
・EV=修正純資産+保有契約価値
修正純資産は会社の資産から負債をひいて、少し調整を加えたものです。
保有契約価値はややこしいので詳細説明は後回しにします。現時点では「将来の配当可能利益の現在価値に少し調整を加えたもの」だと思ってください。
さてまたここで大胆に簡略してしまうとEVって下記のとおりなんですよね。
EV=保有契約が将来生み出す配当可能なお金+現在持っている純資産(資産―負債)
あれ?これDCFと同じじゃない?と思ったあなた。
そうなんです。根本的な考え方は同じなんですよ。
繰り返しになりますが、要は「今持っている純資産+将来入ってくるお金」なんです。
ではなにがEVをややこしくしているのか。それはさきほど説明を飛ばした保有契約価値の計算なんですよね。
本日は長くなりましたのでこの辺にして、次回は保有契約価値の話を掘り下げて説明しようと思います!
この記事の続きはこちら↓